トンネルマガジン「電車賃」

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※注意※
この作品はホラー小説です。怖い話が苦手な方、今は夜だから読みたくない! という方は、次の見出しまでスクロールして次の作品へお進みください。

『電車賃』 By:永瀬なみ

「あっちー。喉からから」

夏のある夕方、バイト帰りの俺は駅へ向かっていた。

いつものように、自販機の前で財布をのぞく。

「あ」

500円しかない。

そうだ、さっきアイツに貸したんだっけ…。

500円あれば、電車には乗れるな。

そう思い、自販機へ500円玉を入れようとした、そのとき。

チャリン…。

手がすべった。

自販機の下へ転がる500円玉。

「やべ!」

あれは俺の大事な電車賃!!

とっさにしゃがんで、自販機の下を探ってみた。

………ない。

「マジか〜……めんどくせ〜」

そうぼやきながら、今度は地面に膝をついて自販機の下をのぞく。

ん?

何か…ある…?

………。

「っ!!!??」

驚きのあまり、俺は思わず尻もちをついた。

今の…な…何だ…!?

バクバクバクバク……

心臓の音が、頭に響く。

体が動かない。

とにかく必死で自販機から目をそらす。

……………。

まばたきも忘れて、ひたすら考えた。

あれは…何…だったんだ?

お、おん…な…?

いや、まさか…。

でも…。

暗くてよく見えなかったが、自販機の下に何かがいたのは確かだった。

かといって、確かめる勇気もない。

500円は諦めて、もう駅へ向かおうと思った。

が、すぐに思い直した。

あの金がないと、俺は電車に乗れないのだ。

このクッソ暑いなか家まで歩いて帰るなんて…どう考えても、無理。

そうこう考えてるうちに、気持ちが落ち着いてきた。

そうだ、きっとアレは見間違いだ。

人は、3つの点さえあれば何でも人だと認識してしまうものだと聞いたことがある。

きっとその類いの錯覚だったのだろう。

大体、俺は心霊系の話とは無縁のタイプだし、まだこんなに明るいのにそんなものが出るワケない。

俺は、深呼吸をした。

「よし」

そう言って、スマホのライトを恐る恐る自販機の下へ向けた。

「!!!」

やっぱり何かいる。

しかも、今度は俺のすぐ目の前に!

息がかかりそうなほど、すぐそこに…。

………女だ…。

今度はハッキリと分かった。

左の頬を下にして、うつろな目でこちらを見ている。

気味の悪い白い顔には、まったくと言っていいほど表情がなく、どこを見ているのかすらよく分からない。

それなのに、俺と目が合っていることだけは不思議と分かるのだ。

にじんだ汗が、額をつたう。

次の瞬間。

ニチャァ…

それは、人間では絶対にありえないほど大きく口を開き、笑った。

「うわぁーーーーーー!!!!!」

ドシン!

俺は、背中から落ちた。

「え……?」

空があるハズのそこには、天井があった。

「何だぁーーー、夢か………」

心底、安心した。

ーーーーー

次の日、夢を思い出しながら歩いていた。

いやー…それにしてもリアルな夢だったなー。

と、いつものように自販機の前で立ち止まり、財布をのぞく。

中には、500円玉が1枚。

え?

そう言えば俺、今日アイツに金、貸…し……。

ドン!

何かが勢いよく俺にぶつかってきた。

「痛って」

チャリン…。

「あ」

《 完 》

『トンネルマガジン』次の作品へ

いやぁ、ホラーで面白い小説だったね。

チャリン…。

あれ?500円が落ちてきた。

怖いけど使っちゃおう。

このお金、君なら何に使う?

君にぴったりの作品に進むから、1つだけ選んでみてね!

コンビニで自分にご褒美を買う

レンタルショップでCDを借りる

お酒、飲んじゃおうかな

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プロフィール


 
大阪在住フリーライター 永瀬なみ

『ライティング事務所くすの樹』代表。
企画、執筆、取材、SEOライティング、編集を中心に活動している。
中学生の息子をもつ30代のシングルマザー。ちょっと太めで古風なお節介。一言でまとめるなら「しっかり者のアホ」。

 

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